1991年、ジェームス・アラードは、希望に燃えてマイクロソフトに入社した。大学で身に付けたインターネットの専門知識を生かそうと、はりきっていた。だが当時のマイクロソフトは、インターネット技術の開発を目標に掲げてはいたものの、社内の関心は低かった。

 人事担当者は、彼を呼んで言った。
「君には、TCピップを担当してもらう」
「TCピップ?なんですか、それは」
 アラードは、新種のビジネス・アプリケーションのことかと思った。
「知らないのかね。えーと、TCスラッシュPIPと書くんだ」
「それ、TCP/IPのことじゃないですか?」
「……そうなのか?」
 アラードは、入社したことを後悔した。

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